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2008年3月

鳥になった王さま 11

「人の涙の匂いがしますね。」
一角獣がいいました。
「また、どこかで悪魔が人を泣かせてしまったのだろう。残念なことだ。」
ツグミもいいました。
ソラトもそのことに気がついたのか、彼女は涙をその瞳いっぱいに溜めながらも顔を上げました。そして、泣くのをやめて真っ白な袖で涙を拭くと、その顔に美しい笑顔を浮かべていいました。
「扉の後にいらっしゃる方。このだめな悪魔のために涙を流してくださることに感謝いたします。さあ、こちらにおいでください。こんな所にまでいらしたからには何かわけがあるのでしょう?さあ、こちらで話してください。」

王さまがおずおずと部屋に入っていきますと、ツグミは
「何だ、鳥ではないか。人ではないのか?」
といいましたが、一角獣は王さまを見て
「まってください、カイムさん。この鳥は、確かに人のようですよ。」
といいました。
王さまは悪魔たちを前にして、しばらくの間ぼうっと立っておりましたが、気がついたときには
「あなたたちは、何をなげいているのですか?天国に帰るとか、天使に戻るとか、それは一体どういうことなのですか?」
と知らないうちに質問が口をついて飛び出していました。

ソラトはその質問を聞くと、再びうつむいてしまいましたが、ツグミは
「何も知らんのだな。」
と呆れ顔でつぶやきながらも
「わがはいたち悪魔は皆、もともとは神の下に仕える天使であったのだ。言葉を言葉通りにしか理解できん馬鹿ものどもの卑劣な策謀によって、天上から堕とされてしまったがな。ところでわれわれは天に戻ることもできる。一万の人々を喜ばせ、感謝の言葉を受けることが、それだ。しかし、われわれはお前たち人間と直接に関ることを禁じられている。だか、それでは『一万の人々を喜ばせる』ことなどできん。そこで、思案に思案をかさねた結果、魔法使いに力を貸し、わがはいたちに代わって彼らに力を使ってもらうことにしたのだ。だが、魔法使いというやつはたいていが悪いやつなものだから、わがはいたちの貸してやった力を好き勝手に使いほうだい使う。結局、逆に一万の人々を悲しませることになり、天に戻ることもかなわんのだ。」
と、王さまに教えてくれました。

「わたしも、天に戻りたい一心で、一人の魔法使いに力を貸しました。でも、そのかたは私の力を使って人々を苦しめるばかりなのです。」
そういってうつむくソラトを見て、王さまは
「この姿も、魔法使いによって変えられてしまったものです。そのせいで、あなたのように泣いている悪魔がどこかにいるのですね。」
と、いいました。

すると、一角獣は王さまをじろじろと見つめてたずねました。
「もしや、あなたはレービュの王ではありませんか?薬によって鳥になったレービュの王ではないのですか?」
その声に、ソラトは弾かれたように顔を上げると、
「ああ、わたしです。その魔法使いに力を貸したのは。」
と叫び、ふたたび涙を流し始めました。

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