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主殿頭が無用の殺生をする話 2

昔、肥後守として任地にあった頃、章家には目に入れても痛くないほどに
可愛がっていた一人の男児がいたが、ある日俄かに流行病を発して明日をも
知れない命となったことがあった。

章家はそこかしこの薬師を呼び寄せ、八方手を尽くして看病し、それでも一向に
病の癒えないのを嘆き悲しんでいたにも拘らず、よく晴れた日には必ず鷹狩に出た。

結局、その子は死んでしまったが、母親は泣き伏し、女房や侍どももみな
「可愛い若さまであったのになあ」と思い起こして涙に暮れる中で、章家一人は
「死んだものは死んだのだ」とその日も揚々と狩りに出かけて行ったから
親類縁者はもとより、侍、下使いの者に至るまで情けないと思わぬものはない。

伝え聞いた偉い坊さんなどは人にも増して心には憎く思ったが、まさか守に向かって
『憎い』などとは言えようはずもなく
「これは正気の沙汰ではない。きっと物怪が憑きおるものに相違ない」と
口を濁した。

 

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